最近、JRPGを昔ほど楽しめなくなってきました。
テキストを延々と読まされる義務感と、緊張感がなく間延びしがちな戦闘に飽きたことがその理由だと分析しています。
私はひと月限定でサブスクに加入することが多いのですが、「期限が迫っている」という不誠実な理由でこの『いけにえと雪のセツナ』を遊びました。(2024年2月20日でサブスクでの配信終了)。
冒頭で挙げた「テキストを読まされる不快感」や「戦闘の面倒くささ」も感じず、気持ち良い気分のままエンディングを迎えました。こんなJRPGは久しぶりです。
いわゆる大作ではなく、これくらいの規模で作られた作品が自分にはちょうどいいことを再確認できました。
15~20時間でクリアできるよう調整されているボリュームも心地よく遊べた理由です。
JRPGの良さが詰まった隠れた名作と断言します。
私の個人的解釈でよろしければぜひ最後までお読みください。
もちろん忖度なしの正直度100%の感想です。
A 個人的な感想
A-1 クリアまでの時間とやり込み具合
・クリア時間とゲームのボリューム
20時間くらい
・やり込み度
主人公Lv52でラスボス討伐
トロフィー取得率 40%
・没入度 MID
物語が抜群に良いので進めたい動機になるが、冒険のテンポを下げてしまうシステムで相殺。
A-2 ストレスポイント
どんなゲームにも必ず不満点はあります。
個人的にストレスを感じた点を挙げます。
・イベントのスキップができない
とあるボスに何度もやられたのですが、直前のセーブポイントからやり直した後、全てのイベントを繰り返し見る羽目になります。Aボタン連打しか回避の方法がなく、強烈なストレスになりました。
・オートセーブがない
雑魚キャラの中に時々「強敵」が紛れ込んでいて、運悪く戦闘を挑むと瞬殺されます。
その際も、有無を言わさず前回セーブした場所からやり直しです。これもなかなか辛い。
こまめにセーブするようになりましたが、その10秒を面倒に感じるのは、オートセーブシステムに慣れきっているからでしょう。
・宿屋がない
街に宿屋がないのはある意味斬新でした。
テントやコテージなどFF(ファイナルファンタジー)でお馴染みのアイテムでHPとMPを回復するのですが、それだけだとやはり寂しい。
・歩くのが遅い
「敵がいるダンジョン」と「世界地図のフィールド」の2種類がありますが、世界地図のフィールドを歩くスピードがもっさりしています。
雪の中を歩く世界観に合っているとは思いますが、もう少し早足で移動したかったというのが正直な気持ちです。
・ファストトラベルがない
ドラクエではかなり初期の段階でルーラを覚えますが、このゲームにはそのファストトラベルの概念がありません。
以前行った街やダンジョンに向かうには徒歩しか手段がないので疲れます。
・ダンジョンから脱出する呪文がない
リレミト的な呪文やアイテムがありません。
・世界地図がない
ミニマップはもちろん、メニュー画面にも世界地図はありません。
自分の位置を把握できないのもちろん、この世界の姿形を最後まで理解できませんでした。
・独特の強化要素
アクセサリーを装備し、そこに特技や魔法をセットするスタイルです。
またそのアクセサリーにも強化要素が含まれています。
刹那、連携、昇華、シンギュラリティ、全てのシステムを把握し、理解するまで少し時間がかかります。
ストレスでもあると同時にこのゲームの面白さでもあるので、理解できればハマる要素に変わります。
A-3 快楽ポイント
どんなゲームも快楽がないと続けられません。
個人的快楽ポイントを紹介します
・悲しくも美しい物語
ネタバレを避けるため多くは語れませんが、多くの人が感情移入できるであろう美しい物語に心打たれました。
・敵が可愛い
ここまで可愛くする必要ある?と感じるほど可愛い。
リスのようなキャラが雪玉の上で踊り出します。物理攻撃が通じなくなるという厄介なスキルなのですが、憎たらしさはゼロ。むしろ癒されます。
このペンギンちゃんは「ビンタ」という攻撃をしてきます
・主人公の発言が尖り過ぎ
2択の発言からどちらを選んでも、物語は問題なく進行する。JRPGでお馴染みのシステムですが、その際の主人公の発言に全く「空気を読まない」選択肢があって笑えます。
クールでぶっきらぼうだが優しい。
おまけに発言が尖っている。
そんな主人公が好きになります。
・サブキャラの冒険への動機づけがシンプル
この人たちは何のために主人公のパーティーに合流するのか、その目的を知ることを楽しむのがJRPGの醍醐味ですが、それぞれのキャラの動機づけが短くてわかりやすい。
全てのキャラの存在に必然性と整合性があります。
・不快なお調子者キャラがいない
JRPGと「陽キャ」は切り離せない関係にありますが、セツナでは登場しません。快適です。
・良いことを言おうとし過ぎていない
胸熱展開は個人的には大好きですが、胸熱すぎると興醒めしてしまいます。
ほどよい胸熱展開と、さらっとした良セリフに好感が持てました。テキストを書かれた方のセンスとバランス感覚の良さを感じます。
旅立ちのシーンで空気を読まないNPCが好き
・防具がない
武器を装備したら、ついでに守備力や魔法守備力なども上昇。武器のみで全てのステータスを管理できるシンプルで秀逸なシステムです。
忙しい現代人には防具を選んでる時間はない。
・余計な演出がない
戦闘後のアイテム獲得の演出だったり、呪文を唱えた際の画面効果だったり、そういった演出が最小限に抑えられていて、ボタンを押せば瞬時に終わらせることができます。
これがテンポの良さを生み出していて、物語をスムーズに進められます。
・コンパクトな戦闘
物語を進めたい人にとっては「障害物」でしかない敵との戦闘。
作り手側はそのプレイヤーの心情を熟知していて、爽快感を感じつつ、サクッと戦闘を終わらせる手法が用意されています。
戦闘参加人数が3人なのも、最初は少なく感じましたが、ゲームのテンポを上げるにはこれが正解なのだなと理解できました。
・ほどよいボリューム
クリア時間は15~20時間くらい。
飽きずに最後まで遊ぶにはこれくらいのボリュームが丁度いい。
・期待を裏切らない王道の展開
最初の小さな島から船に乗って大きな大陸へと向かう王道の展開。
そしてそこで魔物に襲われ、船が難破し、海岸へ打ち上げられる・・・
これぞJRPG!
主人公は浜辺に打ち上げられて大人になる
B ゲームとしての完成度の評価
B-1 操作性とUI
NPCへ話しかける時のターゲッティングに少し難がありましたが、それ以外操作性に関して問題はありませんでした。
ただ戦闘中キャラたちが自由に移動するので、違うキャラに対して回復呪文を唱えたりすることが多発しました。
カーソルは動き続けるキャラを追うのではなく、HPやMPが表示されている固定のウインドウに対してで良かった気がします。
B-2 映像とサウンド
2016年の作品でなおかつお金をかけてないので、グラフィックは今と比べるとそれなりという評価になりますが、個人的にはこれくらいのグラフィックがしっくりきます。
美しくて儚い世界を十分に表現できているし、キャラの造形も素晴らしいので不満は全くありません。
ピアノでアレンジされたBGMが白銀の世界観に見事に調和。ずっと聴いていられるし、良い意味で何度も寝落ちしました。
イケニエとして捧げられる少女の物語なので、どうしても切なく物悲しいシーンが多くなります。そのシーンに丁寧に寄り添う美しい楽曲が印象的でした。
メニュー画面での効果音は開発の方々の「FFが好き」という姿勢が伝わってきます。それを全く隠さないのが逆に好感が持てます。
B-3 パフォーマンス
SSDが絶不調だったので、PS4内蔵のHDDで遊びましたが、ロードが遅いなどのストレスを感じることなく遊べました。大きなバグにも遭遇しなかったので、パフォーマンス面でのストレスはありません。
C 概要とオススメできる人
C-1 やりこみ要素とボリューム
飛空挺を手に入れるまではほぼ一本道ですが、手に入れた後は世界が一気に広がり、やることも増えます。最強装備を集めるもよし、クリアを急ぐもよし、レベル上げに勤しむもよし、全てがプレイヤーに委ねられます。
クリア後のやり込み要素はなく、特技を集めたり、武器を最大まで強化したりというRPGお馴染みの要素をやり込みことになります。
C-2 オススメできる人
・死んだ時の理不尽なやり直しに耐えられる人
・古き良きJRPGを感じたい人
・超ボリュームのゲームに疲れている人
・美しい物語に触れたい人
・ピアノの楽曲が好きな人
C-3 ゲームの概要
いけにえと雪のセツナ
発売日 2016年2月18日 PS4版
2017年3月3日 Switch版
パッケージ版/ダウンロード版 5280円
サブスクリプション PS+Extra以上対応
メーカー スクウェア・エニックス
開発 Tokyo RPG Factory
プラットフォーム PS4/PS Vita / Nintendo Switch / Steam
ジャンル RPG
対象年齢
CERO:B(12歳以上対象)
必要な容量 1.4GB(Switch版)
D さいごに
視点は固定で見下ろし型。
防具は存在せず、武器で全てのステータスを管理。
セツナシステムで戦闘の爽快感を演出。
カメラ操作、防具がないことなどで削った労力を他に費やすことで、遊びやすいゲームに仕上がっていると感じます。予算の少なさを逆手にとって、何かに特化することで良いゲームができる典型例なのかもしれません。
システム面の不便さも多く感じましたが、物語の素晴らしさを軸にした楽しいJRPGを作りたいという意気込みが感じられ、最終的には「隠れた名作」という評価に落ち着きました。
このゲームを作ったのはTokyo RPG Factoryというスクエニの子会社ですが、スクエニに吸収されたというニュースがつい先日2024年1月31日に発表されました。
「開発ラインを減らし、主要作に注力する」というスクエニの方針から、セツナのような小さな名作が生まれる可能性は今後減っていくのかもしれません。
今のスクエニにはどうしてもネガティブな感情を持ってしまいますが、良い作品につながる吸収合併であってほしいと切に願います。
小規模な良作を作り続けることの難しさも理解しているつもりなので、この作品が果たした功績の大きさをここに残しておきたいと思います。
このゲームが世に出た2016年の状況を考えると、クリエイターが冒険ができた良い時代の象徴的ソフトだったのかもしれませんね。
テーマが雪なので冬に遊ぶのがオススメ。
2024年の2月20日までは、PSのサブスク(エクストラ以上)で遊べるのでぜひご自身の手で体験してみてください。
音楽のサントラも主要サブスクで聴けるのでこちらもぜひ。
心が整いますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。