この作品のみどころはただの恋愛ものではなくその時代の社会問題にもきっちりと切り込んでいるところ。2人が無事に結ばれてそのままハッピーエンドになるわけではありません。
第10話は結婚や主婦制度というものについて考えさせられるシーンが多いです。
日野さん
「結婚って安全装置みたいなとこあるよね。どっちかに何かがあった時、1人だと大変でも2人いればなんとかなる。生き抜くための一つの知恵みたいな」
確かにそうかもしれませんが、相手に甘えてしまってダメになっている人が周りに多いので個人的にはそうは思えませんね。安全装置は自分で自分の中に築くもの。
相手に依存し、自分を向上させることを忘れ、要求ばかりし、不満をもらす。
何でも言い合える仲が理想って言うけど、思ったことを全部ぶつけ合うことが果たしてお互いのためになっているのかわかりません。
「長く一緒にいるとそうなるのが普通だよね~」
なんて言ってる人は結婚なんかしないほうがいい。
親しき仲にも礼儀あり。これはもちろん夫婦へも適用されます。いつまで経っても相手への感謝と尊敬を忘れない。それが人間関係の基本です。
■商店街にはびこる搾取
商店街の活性化のために青空市を開催することを提案したみくり。ここから彼女の苦悩が始まります。
商店街をボランティアで手伝うことを回避するみくり。このシーンは主婦はボランティアではないという隠されたメッセージがあるように感じました。
「いいですかみなさん。人の善意につけ込んで労働力をタダで使おうとする。それは搾取です。
例えば友達だから、勉強になるから、これもあなたのためだからなどと言って正当な賃金を支払わない。このようなやりがい搾取を見過ごしてはいけません」
みくり候補の演説は説得力ありました。僕もこの考え方に100%賛同します。
それにしても日給3000円は安すぎる。
同じ頃、沼田さんからリストラを告げられたひらまさ。
社内で一番優秀なエンジニアが年俸が一番多いことが原因で解雇される。なんともやりきれない。彼の偉いところは全く感情的にならず、冷静に対処するところ。
この作品にはドラマにありがちな怒鳴る登場人物がいません。それが安心して観ていられる理由かもしれません。
「沼田さんが謝ることはありません。僕が沼田さんでもそうしてたと思います。自分を責めないでください」
リストラが決定した直後にこれを言える。立派です。
このあとも仕事を探しながら、みくりへのプロポーズのための高級レストランの予約も進める。優秀な男です。
■風見の放った重いひとこと
風見
僕はかっこいいゆりさんが好きですが、それはゆりさんから滲み出るかっこよさであって、誰かのお手本になるために無理をする必要はない。
この一言は自分に鞭を打って頑張っている人々にはかなり刺さったのではないでしょうか。かっこよく生きるために頑張るのは素敵なことですが、男女問わずそのせいで大切なものを失っている人があまりにも多い。
ゆりさんみたいに精神のバランスが取れている人は現実にはほとんどいません。
そういう人から滲み出るのはかっこよさではなく、悲壮感かもしれません。
頑張りすぎて崩壊してしまっている人を見ると、そこまで頑張る必要があるのか疑問に思います。
■完璧なプロポーズを邪魔する小賢しさ
餃子を一緒に作るシーンもよかった。
ひらまさ
仕事を失っても穏やかでいられるのは、今ここにある世界を信じられるからだ。
元々メンタルは安定していたひらまさですが、ここに来てさらに安定します。
完璧な準備をして臨んだ高級レストランでのプロポーズ。
将来のプランも何もかもが完璧でしたが、リストラの損失を自分で埋めようとしているのではとみくりは疑心暗鬼に。
「結婚すれば給料は払わずに私をタダで使えるから合理的。そういうことですよね」
契約結婚だったからこそ出てくるこの言葉。
「わたくし、森山みくりは愛情の搾取に断固として反対します」
商店街でのやりがい搾取からの、最後のシーンでの愛情の搾取。この流れは素晴らしい。
愛情でとろけてしまわずに、冷静に小賢しい自分を貫き通すみくり。流石です。
結婚で失敗したくなければ、この小賢しさこそが「生き抜くための知恵」だと個人的には思いました。