風見さんに2人が契約結婚であることを見抜かれたひらまさは、居酒屋でみくりとの関係を説明。何気ない会話のようで、実はスルーできないほど大切なことを言っています。
ひらまさ
「(2人の関係は)言うなればシェアハウスの縮小版みたいなものです」
風見
「住む場所をシェアし、役割をシェアする?」
ひらまさ
「金銭が介在することでお互いの立場をより明確にし、かつ気を使い合うことができ、より良い環境を生み出すことができる」
これをせずに押し付けあうから恋人や夫婦の関係はダメになっていくのではないかと思ってしまいました。理念なしにお互いの価値観をぶつけ合ってうまくいくほど人間は穏やかに作られてはいません。
情に訴えかけるのではなく、これくらいドライな方が人間関係はうまくいくと僕は思いました。人間の情は全く当てになりません。
ここでシェアという言葉が出たことで、みくりシェア問題が勃発。確かに言葉の響きが悪すぎるし、みくりの不信感は募ります。
それに追い打ちをかけるのが虫歯。前回のぶどう狩りで沼田さんに教わった冷凍ぶどう。これが歯に沁みて虫歯が発覚。高額な治療費のために副業をする必要が出てきます。原作のままなのか、脚本で付け加えられたのかはわかりませんが、前回の話を生かすスムーズな流れ。無駄がありません。
■自尊感情が低いからこその自由意志の提案
家計に赤字が出たことでひらまさに相談しますが、ここでもひらまさの名言が出ます。
ひらまさ
「働く時は下を見てはいけないと思います。抱え込まず今後はもっと相談してください」
ハグしたくなるみくりの気持ちもわかります。しかしハグの願いが叶う前に、みくりはシェアされることに。直接の原因は忌まわしい虫歯の治療費です。
シェアについての交渉の場で「自由意志」という言葉が出ます。これが後々まで尾を引くことになります。
風見の家での出来事を風見から聞かされたあと、嫉妬と自尊感情の低さが原因でひらまさは、「風見さんの元に行ってもいいよ」という提案をします。そしてここでも「自由意志」というずるい一言で相手に全てを委ねます。
従業員と雇用主という関係、束縛したくないという想い、相手を大切に思う気持ち、ひらまさなりに気を使った上での言葉だとは思いますが、みくりはしっくりきません。
「小賢しい女だ」と言われてしまったみくりのトラウマを描く大学時代のエピソード。
なんでエヴァンゲリオンなの?と思いましたが、よく見れば相手の名前はシンジくんだし、このあとの話でカヲルくんも出てくるし、原作者の海野さんがエヴァのファンなのでしょうか。
ところどころに挟まれる小ネタも僕は好きです。わからない元ネタもありましたが、異論反論オブジェクションは世代なので大丈夫でした。
■完璧すぎる風見と繊細すぎるひらまさ
風見の家での風見の言動にはできる男の全てが詰まっています。その完璧な男に居心地の良さを感じるみくりの気持ちもよくわかります。
みくり
「逃げ込んでしまいたくなる。この人と一緒にいれば自己嫌悪の呪いから逃れられるかもしれない」
ヒラマサ
「なんてことはない。戻るだけだ。1人で暮らす平穏な生活に。たまにくるジュウシマツを愛でる生活に。いいなあ、愛される人は。愛される人は、いいなあ」
このそれぞれの想いを描くシーンは沁みました。
ヒラマサは別れを告げられる覚悟もできている。このまま2人は終わってしまうのでは。そんな展開を予想させるのですが、みくりがまたもや突拍子もない提案をします。
自由意志のリベンジ。小賢しさフィールド全開。
45分という枠の中で、ちりばめた伏線をきちんと全て回収して笑いも生み出す。お見事です。