最終回の名場面と言えば、ゆりちゃんがポジティブモンスター五十嵐さんを諭すシーン。ここを抜きには語れません。
五十嵐さん
アンチエイジングにお金を出す女はいるけど、老いを進んで買う女はいない。
ゆりちゃん
あなたは随分と自分の若さに価値を見出しているのね。
五十嵐さん
お姉さんの半分の年なので。
ゆりちゃん
私が虚しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性がこの国にはたくさんいるということ。
今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって辛いんじゃないかな。
私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその一つ。
自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい。
この言葉はアラフォー世代や、アラフィフ世代だけでなく若い世代の人にも響いたんじゃないかな。
このわずか2分のシーンのためだけでも、この作品を観る価値があると言えるほどの金言です。
■主婦の労働の対価とは?
5分48秒から約5分に渡ってのみくりとひらまさの会話は必見。
商店街でこき使われることに納得がいかないみくりは様々な提案をします。
みくり
時給2000円なら耐えられるって仕事も最低賃金では耐えられないって場合があると思うんです
ひらまさ
金額以上の働きを求められてもってことでしょうか?
みくり
そこがモヤモヤポイントでした
現在の夫婦制度が抱えている問題が全てここにつまっています。
それ以外にみくりが挙げた主婦の労働のポイント
・主婦の生活費=最低賃金
・家事労働を評価するシステムがない
・夫が評価しなければ妻は誰からも評価されない
・労働時間の上限もない
忍耐が美徳だった時代とは価値観も結婚観も変わっていて、社会ではもちろんのこと、家庭内ですら誰も最低賃金では働きません。
そんな時代に誰もが疑問に感じていることを明確に提示して見せた。だからこそこのドラマがこれだけ評価されたのではないでしょうか。
これを60歳以上の昭和の夫婦に見せた場合どう思うか、非常に興味があります。
この会話の最後にひらまさが提案する「共同経営責任者」これこそが理想の夫婦関係のような気がします。
■逃げ恥が社会に与えた影響
最終回の場面が神社の境内。トレンディー要素ゼロの場所っていうのもなんだかこのドラマを象徴していてほっこりしました。
けっして説教くさくなく、笑いを交えながら大切なことを少しずつ丁寧に伝えていく。だからこそ価値観がスムーズに浸透していったのではないでしょうか。
このドラマが社会に与えた影響は大きく、特に「亭主関白」という概念はもう今の時代には全く通用しない過去の遺物だということを明確にしました。威張るっていうのは完全な思考停止ですから。
主婦も仕事であり本来は賃金を払うべき、それができないのならば敬意と感謝を示す
ひらまさとみくりの契約結婚を通じて社会に放ったこのメッセージは大きいです。
仕事で消耗、家事で消耗、そんな2人が一緒に暮らしてもポジティブなものは生まれません。ただただ生活だけが苦しくなっていく。罵り合うという修羅場を作ってしまったのは一体誰なのか、その原因は何か。それを考えることはなく、ただただ相手を責め続ける。
全てを相手に丸投げする。それは一見楽なようですが、最終的には自分の首を絞めることになります。
うまくいかない時、ひらまさとみくりは徹底的に話し合いました。その結果として、うまくいきました。話し合うことができるだけのゆとりと感性が双方に残っていれば大丈夫。話し合いすらできないのなら関係が続いても待っているのは不辛だけ。自分の周りを見ていてそう思います。
キャパを超えてまで働かない
相手に求めすぎない
自分のやるべきことを確実にやる
自分に優しく、相手にはもっと優しく
夫婦である前に1人の人間として成熟していることこそが大切なのではないでしょうか。
自己肯定感の低さや、小賢しさなどがテーマとして出てきましたが、それらを取っ払った時に何が残るか。
ひらまさもみくりも人間としてまともだったということですね。