鬼滅の刃、無限列車編に続いて、遊郭編(単行本9~11巻)も読破しました。
安定の面白さ。作者、編集者、携わっている全ての方々にひとまず感謝したいです。
最近知ったのですが、鬼滅の刃の英語版はタイトルがDemon Slayerらしい。なるほど、日本独特の世界観を翻訳するのは難しいですね。
この先はネタバレを含みますのでこれから読み進める予定のある方は気を付けてください。
遊郭吉原という設定でないと味わえない感動
設定は吉原。もうそこが凄い。
「男と女の見栄と欲 愛憎渦巻く夜の街」
「切見世 最下級の女郎屋 客がつかなくなったり 病気になった遊女が送られる場所」
など漫画内で露骨な説明があります。
少年漫画でこれは大丈夫か?と少しだけ心配になりましたが、最近の子供たちはネットで情報を仕入れるから逆に「昔はこういうものがあったんだね、なんでだろう?」と何かを学ぶきっかけになって良いのかもしれません。
隠すよりも真実を知った方が、あとあと必ず役に立ちます。教科書ではなく、少年ジャンプで人生で本当に必要なことを学ぶ日本の伝統。変わってませんね。
柱(リーダー的存在)の宇隋天元に連れられて、主人公たち3人が女装して遊郭に侵入する。少年漫画的な軽いノリで物語は始まります。
目的は天元の嫁3人の救出。
その内の1人が鬼に捕まっていることが発覚。
過去最高に美しい鬼登場。
バトル開始。
さらに強い兄の鬼が登場。
なんとか倒す。
兄妹の鬼の過去回顧、そして涙。
美と醜、生と死、その苦悩と葛藤を描くのに、吉原以上の設定はないです。
設定を生かした悲しい物語を堪能しました。
Demon Slayerでその辺りをどう伝えるのか気になります。英語圏の日本文化を知らない人には設定を説明しないといけないので、物語にのめり込む前の敷居が上がってしまいます。
本当の鬼にはスポットが当たらない
今後どうなるかわかりませんが、今のところは1つの章に対して1人の柱と1人の鬼が登場。そのストーリーを描くという構成になっています。
柱と鬼双方のそれぞれの人生を伝えることで、正義対悪という最も退屈なストーリーを回避しています。鬼滅が好きな人はみんな同じだと思いますが、鬼側に感情移入してしまうことが少なくありません。それが鬼滅の刃の最大の魅力でもあります。
今回の柱、宇隋天元さん。登場時はうさんくささ全開でしたが、好きな女性を守るために命を張る男気のあるナイスガイでした。
くのいちでもある自分の嫁に対して言います。
「自分の命のことだけ考えろ」
「他の何を置いてもまず俺の所へ戻れ 任務遂行より命」
その後怒涛の名言ラッシュが続きますが、かっこよすぎるので省略します。
二編連続で「柱死す」の展開かと肝を冷やしましたが、死ななくてよかった。
那田蜘蛛山の累くんが親子の絆。
吉原遊郭の堕姫と妓夫太郎が姉妹の絆。
毎回、鬼消滅時の回想シーンは切ない。
人が鬼になってしまう時、必ず鬼以上の残酷な行為をしている人間が存在する。
今回の話で言うと梅を生きたまま焼いた侍。
そういう人が本当の意味での鬼だと思う。
11巻の最後の二話、何度生まれ変わっても(前編・後編)は何度も読み返す価値のある深い話。
そして吉原ということもあって全編にわたって着物の描写が美しい。アニメ化が楽しみです。
普通に書店で単行本が買える世の中に戻って欲しい。
転売滅殺。