内向型の逆襲

念のため言っておきますが、ブログ名がとてつもなくダサいことは認識していますよ

No Use For A Nameというバンド名、正しく読めますか?

今から16年前。サッカーのワールドカップが日本で開催されている6月の中旬頃、1枚のアルバムが発売されました。

 

Hard Rock Bottom / No Use For A Name

 

ほとんどの人はどっちがバンド名?って思われはず。

No Use For A Name(ノーユースフォーアネーム)がバンド名です。

難しい単語は1つもないけど少しバンド名が少し長いので覚えにくいかもしれませんね。

ちなみに名詞形でのUSEの発音はユース、高校で習ったはず。

未だにノーユーズと濁点をつけて呼ぶファンがおりますが、この場合はノーユースが正解です。ワールドワイドな愛称もノーユースなのですが、日本の一部ファンだけはノーユーズと呼んでいる状況です。ファンならとりあえずバンド名くらいきちんと覚えようよ。

ビートルズビードルズとは言わないでしょ?そこ大事なとこ。ノーユース!

 

今回はそのアルバムについて書こうと思います。これがパンクロック史上に残る名作なのですよ。うるさい音楽大丈夫、美メロ大好き、切ない曲を欲している方は以下を読み進めて下さい。

 

■Hard Rock Bottomの好きな曲とその解説

好きな曲(全曲素晴らしいのですがあえて)

2. International You Day

3. Pre-Medicated Murder

4. Dumb Reminders

7. Angela

8. Let Me Down

13. Nailed Shut

 

#1から#8まで全くスキのない完璧な曲と流れで聴くたびに圧倒される。特に#1Feels Like Homeから#2International You Dayの流れは荘厳。

その#2International You Dayは彼らの歴史を語る上で絶対に外すことは出来ない名曲。流れるようなメロディーのアップダウンが心地よくそして切ない。

 

Without you My life is incomplete

(あなたがいなかったらオレの人生は不完全)

 

というフレーズがある。おそらく彼のワイフに捧げられた曲。素晴らしい。タイトルのつけ方にも尋常ではないセンスを感じる。妻に感謝できる男、素敵。曲で表現できる男、粋。

Youの部分はファンにとっては自分とも解釈でき、涙が出てくるぜ。

イントロのハイハット(シンバル)が鳴っただけでライブでは悲鳴が上がる。

 

前の曲の歌の余韻を残したまま、ストリングスから始まる#3Pre-Medicated Murderへのつなぎも美しい。どのアルバムでもそうだがNo Useは実に効果的にストリングスを入れる。長すぎるとしらけるし、短すぎるなら入れないほうがいい。その微妙なさじ加減をセンスというのだろう。彼らは音楽を知っている。

このストリングスから歌が入る瞬間もまた情熱的。そこに絡んでくるオクターブのギターが歌のメロディーに対抗するもう一つの影のメロディーパートとして非常に重要。2分にも満たない短い曲だが起承転結がきっちりと表現されている。

 

#4Dumb Remindersは歌詞がいい。

Dumb Reminders(何も言わないが何かを思い出させるもの)というその単語の響きがすでに切なく、もう充分言いたいことが伝わる。

もちろん曲もいい。彼らは毎回お笑いの要素を入れたミュージックビデオを作るのだが、この曲はライブでの口パクがバレてファンに襲われるという内容で笑わせてくれる。シリアスさとユーモアのバランス、音楽は熱く、そのほかは面白おかしく、それが彼らの最大の魅力だと思う。

 

#6Friends Of The Enemyはベースのイントロが耳に残る。ライブでは倍速で弾いたりして笑わせてくれる。

#7Angelaはあまりライブでやらないが、これを生で聴いてみたい。途中の速弾きのギターソロも好きだが、最後の短いギターソロは快楽といっていいほど気持ちいい。このアルバムからアルバム創りに参加したDAVEのセンスが光る。No Useにおいて非常に重要な最後のピース(リードギター)がようやく揃ったと思う。

 

アナログで言えばB面の1曲目にあたる#8Let Me Downもライブでのアンコールで定番になっている名曲。コンピレーションに収録されたデモバージョンでは静かなボーカルとギターだけのパートがもう少し短かったが、アルバムバージョンではアレンジが変わっている。最初は慣れずにとまどったが今は絶対にこちらの方がかっこいいと思う。長い静寂から一気に激情への展開が気持ちいい。

 

このあとカバー曲、そして決してノリが良いとはいえない渋い曲が続く。こういう曲を捨て曲という人もいるが、こうしたスローで重い、休憩のような曲があることによって最後の曲Nailed Shutが生きてくる。もちろん#10Solitaireや#12Insecurity Alertなどは歌詞を読めば深いことを歌っているし、きちんと聞けばクオリティーの高い曲だということもわかる。他の曲が良すぎるんですよ。

 

#13Nailed Shutは来日公演で何度か聴いたが、やっぱりイントロがいい。ツインギターのハーモニーからドラムが入り、その後ベースがかぶさってくる。気持ちが徐々に高揚してくるお手本のようなイントロ。こちらがこれだけ高揚するのだからバンド側は相当演奏していて気持ちいいのだろう。アルバムの最後をこういう比較的テンポのいい曲で閉めることは難しいがこの曲の場合違和感はない。いい終わり方だ。

そして1曲目に戻るとまた静寂の曲が始まる。計算された上でのこの「ハッピーエンド」なのだと思う。

 

曲順がじっくり練られているアルバム。これだけ名曲を揃えても曲順次第ではそれを殺すこともある。このアルバムは特に曲順に無駄がなく完璧だと個人的に思う。

 

アルバムとして中だるみせずに心地よく最後まで聴ける

 

これが名作の条件。

名曲は生まれても、名作を生むのは難しい。

これだけ完成度の高いアルバムを創った彼らに感謝です。

 

Never Forget Tony Sly

実はこの文章は2006年に自分のブログに書いたもの(現在は閉鎖)を加筆修正したものです。またライブに行きたいみたいなことが書いてありますが、現在バンドは存在せずその願いは永遠にかないません。

 

2012年の7月にボーカルのトニーが亡くなっており、その時にバンドは解散しました。もう6年も経ったのですが、今もこうして思い出し、彼の創った音楽を聴き、今日はわざわざレコードを引っ張り出してきて聞いています。

 

今日11月4日はInternational Tony Day

 

トニーの誕生日です。

 

It's too late to talk to you

話かけるには遅すぎる
And it's too soon to say goodbye

そしてさよならを言うには早すぎる

Listen wherever you may be You still live inside my mind

たとえどこにいようとも聞いて欲しい あなたはまだ心の中にいる

Something tells me that you are free again

あなたは再び自由になったのだと何かが教えてくれる
In a place that feels like home

安らぎを感じられる場所で
It's never easy to understand

簡単には理解できそうもない
Why memories hold our hand but people let go

なぜ思い出が僕たちの心をつかむのか

だけど人々は手放す

 

これ、このアルバムの1曲目の歌詞です。当時の彼の亡くなった友人に捧げられた曲。

今ではファンの彼に対する気持ちを永遠に代弁してくれる曲になっています。

1分ほどの短い曲ですが実に美しい。シンプルの極み。

その余韻から続く、2曲目の超大名曲。トータルタイム。3分56秒。

こんな美しい4分間が世の中に存在することが奇跡。

僕にとってはジョンレノンやポールマッカートニー並みのメロディーメーカーで、伝記で後世に伝えるべき偉人です。

 

今回書き直した目的は僕がおセンチな気持ちになることではなく、知らなかった皆さんに新しく知ってもらうことです。

SpotifyApple MusicでNo Use For A Nameを検索してぜひこのHard Rock Bottomだけでも聞いて欲しいですね。

時間のない方は冒頭の4分間だけでも。