公開当初からずっと観たいと思っていたオアシスのドキュメンタリー、スーパーソニック。まさかとは思ったがアマゾンプライムビデオに追加されていたので鑑賞。
食事時のおつまみにと軽い気持ちで観始めましたが、結局最後までノンストップで観てしまいました。完全に引き込まれましたね。
アマゾンプライムに加入している人、90年代を熱い気持ちで過ごした人、ロックが好きな人、兄弟間のいざこざで悩んでいる人、そしてオアシスが嫌いな人、絶対に観た方がいいですよ。強烈にオススメします。
■オアシスとの出会い
僕がオアシスを知ったのは95年ごろ、仲の良かった友人の部屋でよくかかっていていつの間にか曲を覚えている感じでした。けだるい音楽だなという第一印象です。
当時はグリーンデイやオフスプリングなどのUSパンクロックが好きでテンポが遅い音楽はあまり好みじゃなかったんです。僕の中ではウィーザー、オアシスはまったりロックという分類でした。
年を重ねだんだん落ち着いてきて、BPM180の呪縛から解放されました。大学も卒業してケーブルテレビに加入しMTVやSpace Shower TVを見るようになり、その頃に3枚目のアルバムのBe Here Nowが発売されました。そのプロモーションビデオがよく流れていたのですが、その中のDon’t Go Awayという曲にやられました。なんていい曲なんだと感動しました。
オアシスは現代のビートルズであるとその当時言われていましたが、曲だけを聞くと実際そうなんですね。ギター兼作曲をするノエル・ギャラガーはメロディーメーカーとしては超一流、大声で歌いたくなるメロディーを書かせたら彼の右に出る者はいない。
ただ正直言うとその頃僕は彼らに対してビッグマウス系のお騒がせロックスターというイメージしかなくてオアシスのことがあまり好きじゃなかったんですよ。兄弟喧嘩ばかりしているし、ライブ会場で暴れたとか、ホテルを出禁になったとか。またガンズのアクセルローズみたいなやつが出てきたなって思いました。
今思えば結局僕もメディアに踊らされていたんですね。それは全部事実なんですけど、それを含めてオアシス。メディアは悪意を持ってこういう愚かな人たちがいるんですよというふうに伝える。若くてまだ真面目だった青年にはそういう一見おろかな振る舞いをまともに受け止めてしまって安易にこの人たち嫌いっていう判断を下してしまったのでしょう。
もちろんぶっとんではいるんですけど、兄のノエル・ギャラガーはずっと真面目に音楽に向かい合ってきている。実際あれだけいい曲を量産するんだから、テキトーにやってるわけがない。音楽に対する彼の姿勢は本当に純粋ですよ。
今回約2時間のドキュメントを見てそのあたりの謎が解けましたね。
■数々の名シーン
ハッパとギターに出会ってほかの世界を知った
なぜ外出する必要があるの?
オレの欲しいものは全て音楽の中にあった
彼の音楽への姿勢がよくわかる一言。
ハッパはともかくとして、音楽への情熱は計り知れないものがある。それはドキュメント全般から伝わってくる。
好きなシーンその1
代表曲でもあるLive Forever誕生。
ノエルが弾き語るデモ音源から既に名曲の風格がある。演奏は全然上手じゃないが曲は完成されている。
俺はいい音楽や曲を聞き分けることができた。
だからわかるんだ。これはケタ違いだって
作った時点でもう名曲だとわかっていたノエル。
好きなシーンその2
お袋は今も昔も天使だ
(中略)
お袋には胸を張ってほしい
3つも仕事をしないで楽をしてほしい
このリアムの言葉に母への気持ち全てがつまっている。偉大なる兄弟の陰に偉大なる母あり。
好きなシーンその3
(マスコミに)いろいろ書かれてるけど
好きに書けって感じさ
俺たちの音楽は時を超えて残ってく
もしインタビューが時系列順にならんでいるとしたら、これファーストアルバムを作る前、シングルを2、3枚出した時点で言ってるんですよ。ビッグマウスを超越していて、本当にいいものを作るとそういう心境になるのかなと感心しました。
そして51分からの重苦しいシーン。このドキュメントの肝だと思う
あえて内容には触れませんがここは全ての人の希望になるはず。
時間がない人はそこだけでも見てください。
もっとも好きなシーンは、名盤モーニンググローリーについて語るところ。
あのアルバムの曲はどれも最高だ。
といっても俺は書いただけ。
バンドも演奏しただけ。
今まで歌ってくれた何百万人って人たちが
最高の曲にしてくれた
普通はエゴがあってなかなかこんなこと言えないですよ。
ブリットアワードの受賞式でのコメントもいい。
ファンの選んでくれた賞が一番大事で特別だ。
企業のブタどもの賞なんか意味ない。
その時を振り返って心情を吐露する。
曲作りは難しいが、しゃべるのは簡単だ。
取材では大口を叩いて問題を起こすようにしてる。
愛のある皮肉を言える英国人。それがノエルギャラガー。
それを誇大解釈して伝えたのがマスコミ。煽られた大衆。
いつの時代もその構図はかわらない。
当時の彼らよりひとまわり以上大人になったこの立ち位置から若い頃の彼らを見てみると無駄な感情を排除して冷静に見ることができる。
挙げればきりがないがいいドキュメントでした。
■オアシスはやはり偉大
このドキュメントを見ていてずっと気になったことは「オアシス」をレコーディング中などの「オアシス」という字幕。これはファーストアルバムのDefinitely Maybeを邦題オアシスとして出してしまったため。
Definitelyが日本人にとってキャッチーじゃないからという理由だろうが、こんなことをするからまぎらわしくなる。彼らはオアシスという名前のアルバムを出さなかったから良かったけど、もし出していたらさらにややこしいことになっていた。
字幕を作る側もオアシスにしないで「1枚目のアルバム」と表記するべきだったように思います。
ドキュメントの中で初来日渋谷のクラブクアトロでの伝説的ライブの映像が流れますが、女性ファンばっかりじゃないですか。僕の周りにオアシスを熱心に聞いている人なんていないし、特に女性はオアシスなんか知らないという前提でこれまで生きてきましたが考えを改めようと思います。
あらためていいバンドだなと思うし、名曲が本当に多い。
これからもファンを増やし続けるであろう偉大なバンド。
最後に隠れた名曲を1つ
最後のアルバムとなってしまった2008年発表のDig Out Your Soulに収録されているI'm Outta Time。これ弟のリアムギャラガーが書いているんですよ。シンガーとしてではなく、ソングライターとしての成長を感じる渾身の1曲。