内向型の逆襲

念のため言っておきますが、ブログ名がとてつもなくダサいことは認識していますよ

彼女の望む豪快な漢(オトコ)にはなれなかった

f:id:tonycat:20220112152218j:plain

今回は「面白くない」「タメにならない」と自覚した上でアップしているのでオチも何もありません。ご了承ください。

 

高校2年生の時に、少しだけ女の子と付き合った。90年代の初め、まだモスもマックもなかった小さな田舎町での話だ。

 

夏の衣替えの時期にずっと長袖を着ていた僕に彼女が話しかけてくれた。

「なんで長袖着てんの?暑くないの?」

なんて答えたかは覚えてないが、それがきっかけで話すようになった。

話しかけられるのを狙って着ていたわけではないが、あの時長袖を着ていなかったらおそらく彼女とは仲良くなっていなかっただろう。自分に興味を持ってくれた人を好きになるのにそう時間はかからなかった。

 

早起きの苦手な僕が早起きして、彼女の電車の時間に駅に向かい、駅から学校まで一緒に登校した。部活の時は一緒に帰れないので、テスト週間の時だけ一緒に図書館で勉強した。

 

したことはそれだけだ。他に何もしていない。でもそれだけでじゅうぶん楽しかった。健全すぎて涙が出る。手も繋いでいないし、手作りの弁当とか食べてないし、デートもしていない。仲良くなった実感もないし、一緒に少しだけテスト勉強しただけだ。

 

一回だけ彼女を家に呼んだ。もちろん生まれて初めてのことで、奇跡のような瞬間だった。図書館から駅への帰り道に家があったという奇跡。立地が良すぎて涙が出る。誰も家にいて欲しくなかったが、こういう時に限って母在宅だ。

 

もう今から30年前のことだというのによく覚えていることがある。

その時にメタリカヘヴィメタル)をかけた。僕はうるさい音楽を演奏するアメリカのお兄さんたちに夢中だった。

 

女の子ウケのよい音楽をかけることよりも、自分が聞きたい音楽を流すことを優先した。まあ、高校生なんだからそれでいいとは思う。普通そういうときはミスチルとかスピッツだろと思うかもしれないけど、その時まだミスチルスピッツも下積みをしていた。

 

とにかく母ちゃんに会話を聞かれたくなかった。雰囲気を作るよりも、爆音でかき消すことを選んだ。ずっとうるさいギターが鳴ってないとダメなんだ。B’zとかリンドバーグじゃ音量が足りないんだ。

 

その少しあとに僕はフラれた。

半袖を当たり前のように着ていく頃にはもう彼女との関係は終わっていた。

僕の夏はあっさりと終わりを告げ、早起きをして駅に向かうこともなくなった。

 

それなりに悔しいとか悲しいとかあったと思うけど、それ以上に「えっ?もう終わり」っていう気持ちが強かった。

恨んだり、逆上したり、みたいなネガティブな気持ちはなかった。「いつか後悔させてやるぞ」みたいな物騒な気持ちも芽生えなかった。そんな状態になる前だったし、まあ、自分が至らなかったんだなと納得した。

 

ものすごい勢いで好きになってくれたのと同じスピードで嫌われたんだろう。

彼女が別れを決意した理由も、思い当たる節がある。

原因は大音量のヘビーメタルであってほしいけどそうじゃない。

 

図書館で勉強をした時に、部活の先輩を見つけたのだが、彼に見つからないように僕が隠れたことだと思う。

「男らしく堂々としてほしい」

「隠れなきゃいけない関係なの?」

その気持ちはよくわかる。確かにあれは男らしくなかった。

 

でも僕にも隠れなきゃいけない理由があった。

周りの人にとやかく言われるのがとにかく不快なんだ。見つからなければ絶対に余計なことを言われることもない。だから僕は隠れた。

 

でも彼女は中央突破して欲しかったんだろうね。

「センパイ。オレの彼女です。よろしくっす」って言って欲しかったんだろうね。どう考えてもその方が青春だし、隠れてやり過ごすなんて全然青春じゃない。

 

中央突破の方が圧倒的に爽やかだし、それが男として理想だと思う。残念ながら当時の僕にはそれができなかった。隠れてやり過ごすっていうのは、僕にとっては最善の選択だったけど、彼女にとっては最悪の選択だったんだろう。

 

この後、狂ったようにギターにのめり込んでいった。それまで以上にメタリカを聴いた。部活にも尋常でないほど熱が入った。彼女にわずか2週間で振られたダサい男を払拭したかったんだろうね。でもそれは高校生として健全な選択だったと思う。

 

今でも中央突破できるかと言えば、そんなに変わっていない。人前でコソコソはしないけど、いちいち中央突破はしない。知り合いに会いそうなところにはいかないし、そんな時間帯も選ばない。女々しいところは30年前とたいして変わっていない。

 

ただ一つ変わったことがある。

そういう時に、メタリカをかけなくなった。

自分の好きな音楽の中から、きっちりと女子が喜びそうな曲を選ぶようになった。

ずるいなあとは思うけどね。